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固体物理セミナー

2013年5月31日

固体物理セミナー
(平成25年度 第1回)
連携融合セミナー
インタラクティブ物質科学・カデットプログラムセミナー

日時:5月31日(金)14:40-16:10
場所:基礎工学部 B103講義室
講師:山本秀樹氏
NTT物性科学基礎研究所企画担当副所長、
機能物質科学研究部 薄膜材料研究グループ長兼務

題目:超伝導物性の研究に資する高品質な銅酸化物超伝導体薄膜

要旨:
高温超伝導体発見からの約25年にわたる研究によって、銅酸化物のような複雑な
物質の成膜技術は大きく進歩し、テープ線材の実用化研究に、共蒸着(MBE)法、
PLD法などの高度な薄膜成長技術が用いられるまでになっています。一方で、物
性研究に役立つレベルの高品質な薄膜を作製するのは非常に大変です。

物質本来の特性を示す高品質な薄膜が、他の物質系の場合と同様に、「結晶性」
の良い薄膜であることは当然ですが、銅酸化物超伝導体の場合には、『結晶構造
を保ったまま酸素組成が大きく変化し、物性も大きく変化する』という特徴のた
め、「結晶性」に2つの因子が存在します。
(I) 格子配列の良好性(≒通常の意味での結晶性)
主にカチオンの組成、配列で支配される。
(II) 酸素副格子の完全性    酸素の組成、配列で支配される。

良好な結晶性を実現するために、適切な基板の選択や、温度をはじめとする成長
条件の最適化を要することは勿論ですが、(I)の観点からは特に金属元素組成の
制御法の確立が本質的です。金属元素を別々のソースから供給するMBE法ではこ
の組成制御技術の確立と発展が特に重要でしたし、一般に化合物ターゲットの組
成が薄膜にほぼ転写されるPLD法でも精密組成制御の必要性が指摘されています。
一方、(II)の観点からは、成膜時の酸化条件に加え、成膜後薄膜を冷やす際の酸
化雰囲気にも細心の注意を払う必要があります。また、酸素副格子の完全性の向
上に、精密なアニールが必要な場合もあります。

一般に、「物性研究用の良質試料 =
大型単結晶」であり、エピタキシャル薄膜は、応用あるいは接合・超格子などで
発現する物性の研究に有用と考えられてきました。しかしながら、単結晶が薄膜
でのみ得られる物質もありますし、また上記(II)の因子によって、物質本来の物
性の研究自体にも薄膜試料の方が適する場合もあります。本セミナーでは、発見
から25年を経て、高温超伝導機構にはまだまだ本質的にわかっていない点が残っ
ていること、その解明に薄膜試料が役立つと考えられることなどを議論したいと
思います。

問合先:多田博一
Tel: 06-6850-6430
E-mai : tada@mp.es.osaka-u.ac.jp

主催:阪大基礎工 物性物理工学領域

* 固体物理セミナーは、物性・未来(物性系)M2必修科目「ゼミナール
III」に該当します。

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