イベントEvents

HOMEイベント極限量子科学研究センター & カデットプログラムジョイントセミナー

極限量子科学研究センター & カデットプログラムジョイントセミナー

2013年8月23日

極限&カデットプログラムジョイントセミナー

<極限量子科学研究センター & カデットプログラムジョイントセミナー>

タイトル:重い電子系化合物
      -YbAlB4のFeドープ誘起量子臨界現象と価数揺らぎ

 日時:2013年8月23日(金) 13:30~14:30

 場所:極限量子科学研究センター 2F会議室

 講師:久我健太郎博士 (東京大学物性研究所)

概要:重い電子系化合物は、特徴的なエネルギースケールが小さいこと、また、比較的純良な試料が作成可能であるために、極低温での量子臨界現象の詳細な研究の恰好の対象となる。量子臨界点近傍では、新奇な超伝導や非フェルミ液体といった興味深い現象が現れ、精力的に研究がなされている。特に、CeCu6-xAux、YbRh2Si2、-YbAlB4といった物質では、従来型のスピン揺らぎの理論では説明できない新しいタイプの非フェルミ液体の振る舞いが発見され、Kondo Breakdownや価数量子臨界現象の可能性など、近年、様々な興味深い可能性が実験的、理論的に指摘されている。
我々が研究を行っている重い電子系化合物YbAlB4には、局所的に反転対称性を破った-YbAlB4とそれを破らない-YbAlB4の2種類の結晶構造がある。-YbAlB4は常圧、零磁場下で極低温において自発的に量子臨界現象を示すユニークな金属であると同時に、Yb系重い電子系化合物で発見されている唯一の超伝導体である[1]。一方、-YbAlB4は極低温ではフェルミ液体性を示し、高温では-YbAlB4と似た性質を示す[3]。興味深いことに、-YbAlB4、-YbAlB4共に近藤格子の振る舞いをするにもかかわらず、Ybイオンの価数がそれぞれ2.73、2.75の価数揺動の性質を持つ[4]。また、-YbAlB4のAlサイトの一部をFeで置換することにより、非フェルミ液体や磁気秩序を誘起できる。非フェルミ液体はわずか1.4%のFeで置換することにより現れ、電気抵抗、磁化、比熱がそれぞれ-YbAlB4と同じ特異な温度依存性を示しており、非フェルミ液体の起源は同じである可能性がある。
また、非フェルミ液体が誘起されるFe濃度付近では、Ybイオンの価数が急激に変化し、磁気秩序転移温度TNが絶対零度に抑えられることから、価数揺らぎ、磁気揺らぎの等の起源が考えられる。磁気揺らぎの効果については、TNを磁場を印加することによって抑制し、磁気的な量子臨界点を誘起させることで検証できる。本発表では、これらの実験の詳細を紹介し、価数揺らぎと量子臨界現象の関係について議論する。
[1] S. Nakatsuji et al., Nature Physics 4, 603 (2008).
[2] Y. Matsumoto et al., Physical Review B 84, 125126 (2011).
[3] M. Okawa et al., Physical Review Letters 104, 247201 (2010).

連絡先:萩原政幸(極限量子科学研究センター・超強磁場量子磁性部門)
内線6685・hagiwara@cqst.osaka-u.ac.jp

PAGETOP