活動報告Reports
第7回固体物理セミナーを開催しました。
2014年11月11日
2014年11月11日(金) 14:40~16:10
大阪大学基礎工学国際棟シグマホール
講師名:安藤 敏夫 教授
講師所属:金沢大学・バイオAFM先端研究センター長
講演タイトル:「タンパク質の機能ダイナミクスを動画撮影する高速AFM」
要旨: タンパク質の機能に密接に関係するのは、構造、構造のダイナミックな変化、ダイナミックな分子間相互作⽤である。それ故、構造解析とダイナミクス解析が機能メカニズムに迫るための主要なアプローチである。従来の構造解析⼿法(X 線回折、電⼦顕微鏡、NMR)は多くのタンパク質の詳細構造を明らかにしてきたが、静的な構造に限られる。⼀⽅、蛍光分⼦などの光学プローブを介して調べるダイナミクス解析では、タンパク質分⼦そのものは観察できない。すなわち、タンパク質分⼦の構造とダイナミクスを同時に観察することはできない。この技術的限界は、我々が開発した⾼速AFM により最近克服された。
水中で1 秒間に100 万回Z ⽅向に振動するカンチレバー探針が基板に載ったタンパク質分⼦を叩き、XY ⽅向各点での試料の⾼さを計測し、その分⼦の形状を可視化する。
その叩く力は⾼速なフィードバック制御により弱く⼀定に保たれるため、タンパク質の機能は乱されない。空間分解能はXY ⽅向で2nm、Z ⽅向で0.1nm 程度、1画像を撮る時間は、条件にもよるが、通常50〜100ms である。
この新規顕微鏡により、光照射に応答するBacteriorhodopsin 、Actin 繊維上を歩くMyosin V、構造変化が回転伝搬するF1-ATPaseなどが撮影された。得られた動画映像には、従来推測されていた分子の振る舞いが反駁の余地にない明瞭さで現れるのみならず、予想もされていなかった現象も現れ、従来の常識を覆す新しい発⾒が可能であることが実証された。この新⼿法はさらに多くのタンパク質系の機能メカニズムを解明していくものと期待されるが、⾼速AFM をベースに更なる新しい情報を得るための技術開発が現在進められている。この講演では、⾼速AFM の技術、バイオ応⽤研究を概観するとともに、最近の技術開発の状況を紹介する。