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H28年度 第7回 固体物理セミナーを開催します

H28年度 第7回 固体物理セミナーを開催します

2016年10月6日

第7回 固体物理セミナー

日時:10月6日(木)16:20-17:50
場所:基礎工講義棟B105
講師:田仲 由喜夫 教授(名古屋大学工学研究科)
題目: 「奇周波数クーパー対の物理 (最近の理論研究について)」

要旨:「クーパー対は2つの電子のペアで、ペア振幅という物理量で特徴づけら
れる。2電子の時刻の入れ替えに関して奇関数になるクーパー対を奇周波数ペア
と呼ぶ。偶周波数ペアがスピン1重項偶パリティ、スピン3重項奇パリティである
のに対して、奇周波数ペアはスピン3重項偶パリティ、スピン1重項奇パリティと
なる。
奇周波数クーパー対の研究は、1)バルクの超伝導状態としてペア振幅だけでな
くギャップ関数(それに関連した秩序)が存在するのか、すなわち奇周波数超伝
導体が存在するのか 2)バルクの超伝導(主たる超伝導)状態は、従来から知
られている偶周波数ペアであるが対称性の破れにより奇周波数ペア振幅(ペア相
関)が混在する(誘起される)のかという2つの大きな流れに分かれる。
1)に関してはBerezinskii の研究以降[1]、強相関電子系で多くの研究が今日
までになされている[2]。特に最近の2チャンネル近藤格子における計算は微視的
ハミルトニアンに基づいて低温まで計算されている点で注目できる[3]。2)に
関しては、強磁性接合で奇周波数ペアの存在がEfetovらにより指摘された。[4]
一方で我々は、不均一系において並進対称性の破れに伴い遍く奇周波数ペアが存
在することを明らかにした[5]。スピン3重項超伝導体接合の異常近接効果は、ス
ピン3重項奇周波数ペアに起因すること[6]、アンドレーエフ束縛状態は奇周波数
クーパー対を必ず伴うこと[7]、異方的超伝導体に現れる表面アンドレーエフ束
縛状態[8]は、奇周波数クーパー対で記述できることを明らかにした[5,7,9]。ま
たRashbaナノワイヤー・s波超伝導体接合系などの1次元的トポロジカル超伝導で
は、マヨラナフェルミオンがエッジに現れることが知られているが[10]、マヨラ
ナフェルミオンが存在する時には必ず奇周波数s波のクーパー対がエッジに現れ
ることを示した[11]。奇周波数ペアはパラマグネティックな磁気応答を示し[12]、
今日トポロジカル超伝導を理解するうえで奇周波数クーパーペアという概念は非
常に重要になっている[8,13]。
この発表では、これまでのバックグラウンドを紹介した後、最近の2つの成果を
紹介したい。1つ目の成果は、2重量子ドットとs波の接合に関する研究である。
この系においては、クーパー対が2つの量子ドットに相関を持ちながら分裂して
近接効果をしながら浸入することが知られているが、ここでドットと電極の結合
を制御することで奇周波数ペアの振幅を大きくできることを理論的に示した。特
に非局所コンダクタンス測定を行い低電圧のコンダクタンスの符号により奇周波
数ペアの検出ができることを明らかにした[14]。
2つ目の成果は2チャンネル近藤格子接合の理論である[15]。2チャンネル近藤格
子においてはバルクの自己エネルギーに奇周波数ギャップ関数が現れる。2チャ
ンネル近藤格子系の超伝導はバルクではディアマグネティックな応答を示す[3]。
この系とKitaevモデルのような奇周波数s波のペアをエッジ状態として持つ系の
ジョセフソン効果を計算した。互いに異なる磁気応答の性質の奇周波数ペアの存
在する系の接合であるが2チャンネル近藤格子はハミルトニアン形式で定式化す
ることができたために、ジョセフソン電流は実数の量として求めることができた
[16]。
奇周波数クーパー対の研究は、メゾスコピック超伝導・超流動、トポロジカル超
伝導・超流動、そして強相関電子系の問題としてさらに発展するものと思われる。

[1]V. L. Berezinskii, JETP Lett. 20, 287 (1974).
[2] T. R. Kirkpatrick and D. Belitz, Phys. Rev. Lett. 66, 1533 (1991); A.
Balatsky and E. Abrahams, Phys. Rev. B 45, 13125 (1992); V. J. Emery and S. Kivelson, Phys. Rev. B 46, 10812 (1992); Y. Fuseya, H. Kohno, and K.
Miyake, J. Phys. Soc. Jpn. 72, 2914 (2003); K. Shigeta, S. Onari, K.
Yada, and Y. Tanaka, Phys. Rev. B 79, 174507 (2009); T. Hotta, J. Phys.
Soc. Jpn. 78, 123710 (2009); H. Kusunose, Y. Fuseya, and K. Miyake, J.
Phys. Soc. Jpn. 80, 054702 (2011).
[3]S. Hoshino, Phys. Rev. B 90, 115154 (2014); S. Hoshino and Y.
Kuramoto, Phys. Rev. Lett. 112, 167204 (2014). [4]F. S. Bergeret, A. F. Volkov, and K. B. Efetov, Rev. Mod. Phys.77,
1321 (2005).
[5]Y. Tanaka, A. A. Golubov, S. Kashiwaya and M. Ueda, Phys. Rev. Lett.
99, 037005 (2007).
[6]Y. Tanaka and A. A. Golubov, Phys. Rev. Lett. 98, 037003 (2007).
[7]Y. Tanaka, Y. Tanuma, and A. A. Golubov, Phys. Rev. B 76, 054522 (2007).
[8]S. Kashiwaya and Y. Tanaka, Rep. Prog. Phys. 63, 1641 (2000).
[9]Y. Tanaka, M. Sato, and N. Nagaosa, J. Phys. Soc. Jpn. 81, 011013 (2012).
[10]R. M. Lutchyn, T. Stanescu, and S. D. Sarma, Phys. Rev. Lett. 106
127001 (2011); Y. Oreg, G. Refael, and F. von Oppen, Phys. Rev. Lett.
105 177002 (2010); M. Sato, Y. Takahashi, and S. Fujimoto: Phys. Rev.
Lett. 103 020401 (2009).
[11]Y. Asano and Y. Tanaka, Phys. Rev. B 87, 104513 (2013).
[12] S. Higashitani, J. Phys. Soc. Jpn. 66, 2556 (1997); Y. Tanaka, Y.
Asano, A. A. Golubov, and S. Kashiwaya, Phys. Rev. B 72, 140503 (2005); T. Yokoyama, Y. Tanaka, and N. Nagaosa, Phys. Rev. Lett. 106, 246601 (2011); S. Suzuki and Y. Asano, Phys. Rev. B 91, 214510 (2015).
[13]T. Mizushima, Phys. Rev. B 90, 184506 (2014); M. Sato and D.
Fujimoto, J. Phys. Soc. Jpn. 85, 072001 (2016).
[14]P. Burset, Bo Lu, H. Ebisu, Y. Asano, and Y. Tanaka, Phys. Rev. B,
201402 (2016).
[15]S. Hoshino, K. Yada, and Y. Tanaka, Phys. Rev. B 93 224511 (2016).
[16]Y. V. Fominov, Y. Tanaka, Y. Aasno, and M. Eschrig, Phys. Rev. B 91,
144514 (2015).

問合先:水島 健(基礎工D318号室)
Tel: 06-6850-6441
E-mail:mizushima@mp.es.osaka-u.ac.jp

* 固体物理セミナーは、物性・未来(物性系)M2必修科目「ゼミナールⅢ」に該当します。

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