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H28年度 第9回 固体物理セミナーを開催します

2016年11月10日

平成28年度 第9回 固体物理セミナー

日時:11月10日(木)10:30-12:00
場所:基礎工学研究科講義棟 B102
講師:高橋 正光 グループリーダー
(量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学研究部門 放射光科学研究センター)
題目:「放射光X線を用いた結晶成長機構の解明」

要旨:結晶成長は、気体や液体の状態でばらばらになっている分子が、自然の法則にしたがって自発的に秩序だった配列構造を作っていく過程である。それは自然現象に他ならないが、温度、圧力、濃度などの条件を制御したり、成長手順を工夫したりすることによって、結晶欠陥の量を低減するなど結晶の質を制御したり、場合によっては自然界には存在しない新物質をも創り出したりすることができる。結晶成長の舞台となるのは、気体や液体の母相と接している結晶の表面である。したがって、結晶成長のメカニズムを理解し、利用するためには、成長表面に関する知見が重要となる。結晶成長過程の観測手法として、近年、シンクロトロン放射光X線の有用性が認識されつつある。X線は第一に、物質の透過性が高く、非破壊の測定手法であるため、様々な環境で進行する結晶成長のその場測定に応用しやすい。一方で、バルク結晶からの回折に比べるとはるかに微弱な表面X線回折散乱も、シンクロトロン放射光の強力なX線により測定が容易になった。さらに、原子1個から始まり、マクロな秩序構造が形成されていく結晶成長過程を追跡するには、何桁もの空間スケールにわたる構造を連続的に観測できることが重要であり、それには、波長が原子スケールで、かつミクロン以上の空間コヒーレンス長を持つ放射光X線が威力を発揮する。本セミナーでは、半導体デバイスの作製などに広く使われている分子線エピタキシー法とよばれる手法の背後にある結晶成長メカニズム解明に向けた、放射光X線回折・散乱の適用について議論する[1-3]。他の一次相転移と同様に、結晶成長は、非平衡状態に置かれた系での核形成とそれに引き続く核成長の過程からなる。核形成過程の例として、GaAsナノワイヤ成長をとりあげる[4,5]。GaAsはバルクの状態では閃亜鉛鉱構造が安定であるが、直径100nm程度のナノワイヤとして成長させると、ウルツ鉱構造などを含む構造多形を示すことが知られている。その形成メカニズムをその場放射光X線回折と核形成理論に基づいて説明する。一方、核成長過程では、小さな二次元核が消滅し、大きな核の成長に使われていく、オストワルトライプニングとよばれる普遍的な現象が知られている。これについて、GaAs膜の成長における二次元核成長過程の解析結果を紹介する。さらに、結晶成長におけるゆらぎの重要性とその測定について議論する。

[1] M. Takahasi , Y. Yoneda and H. Inoue and N. Yamamoto and J. Mizuki,
Jpn. J. Appl. Phys. 41, 6247 (2002).
[2] Takahasi, J. Phys. Soc. Jpn. 82, 021011 (2013).
[3] 高橋正光、 日本結晶成長学会誌、42, 201 (2015).
[4] M. Takahasi , M. Kozu, T. Sasaki and W. Hu, Cryst. Growth Des.,15, 4979 (2015).
[5] M. Takahasi , M. Kozu and T. Sasaki, Jpn. J. Appl. Phys., 55,04EJ04 (2016).

問合先:若林 裕助(基礎工学研究科)

* 固体物理セミナーは、物性・未来(物性系)M2必修科目「ゼミナールⅢ」に該当します。

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